12.アジアカップ⑦決勝 日本vカタール~試合前に決した監督采配の差~

2019/02/09

試合分析 日本代表

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準決勝では優勝候補の一角とされたイランと対戦し、前半はエースのアズムンに仕事をさせずイランを苛立たせ、後半3点を奪い3-0で快勝した日本。

決勝戦は16得点無失点と圧倒的な強さで勝ち進んできたカタールに対して1-3で敗戦。予想以上に厳しい試合展開となってしまったが、この原因はどこにあったのか考察していく。

カタール戦の日本代表先発メンバー


●1-3 南野拓実

日本はイラン戦で負傷交代した遠藤航が出場できず、塩谷司を先発に起用。それ以外は同じメンバーで臨んだ。

アンダー世代から監督として関わってきた、スペイン人のサンチェス・バス監督率いるカタール。4バックと3バックを使い分け、今大会様々なシステムを使い分けてきたが、日本戦にはサウジアラビアや韓国戦でも採用した352(5311)で挑んできた。

開始から戦術的不利に陥った日本

カタール戦では、キックオフからの互いのシステムの違いが日本側の不利な試合展開を生み、それが失点に直結する形となったことが全ての敗因にあるといっても過言ではない。

それほどカタールにいいように振り回された。

今大会は相手の出方を伺いながら試合を進める事が多かった日本。ところがカタール戦では日本が先手を打って攻め込む形となった。それに対しカタールは前線のエース、アルモエズ・アリを1トップに置き、5-4のラインを敷いて守備から入った。

頼りの大迫が封じられ攻撃はストップ

攻撃面で見るとこれまでチームを救ってきた前線の大迫勇也のポストプレーは完全に封じられた。

相手もここまでの日本の試合を当然スカウティングしており、大迫を起点としてそこから前に繋いでいく日本の攻撃は完全に読まれていたといっていい。中盤や後方から縦パスが入っても厳しく寄せられ、中央では前を向いてボールをもたせてもらえなかった。

サイドでも右の堂安律は足元でパスを受けて縦へのドリブルを見せたが通用せず、左の原口元気は人の多い中への意識が強く、中盤の柴崎岳からパスは通ってもそこから先の崩しに関して、少なくとも前半は停滞してしまった。

グループステージでも見られた、攻撃の展開力の引き出しの少なさがここにきて再び表面化してしまった形だ。

決勝まで勝ち進んできたカタールは、これまで戦った5バックのトルクメニスタン(3-2)やベトナム(1-0)より当然上手だと想定できる。にも関わらず、中央に人数を割く相手に、再び中央からの攻撃をメインとしたのは何故だったのだろうか。

352の相手との噛み合わせ

相手に奪われたあとの守備にも大きな問題があった。

カタールは自陣でボールを持った場合に、3センターバックがパスを回して攻撃の形を作っていく。日本は大迫南野拓実の2人が寄せていくが、ここに食いつくと当然、中盤アンカーに入ったマティボはフリーとなり縦パスを通される。

そこにCHの柴崎塩谷が寄せれば、相手のハテムハイドスの2CHとセカンドトップのアフィフの三人をどちらか一人が見なければならない状況となってしまう。

こうして後手を踏んだ日本。プレスに行ってもパスで揺さぶられ続け、簡単に攻撃を許し、前半の早い段階で2点のビハインドを背負うことになってしまった。

相手はこれまでも352の形を見せており、森保監督も「想定して準備はしてきた」と語っている。にも関わらず全く対応できていなかった点は今後に大きく不安が残るものとなった。

カタールのアルマエズ・アリアフィフは今大会でも活躍を続けてきた選手である。こういったノッっている選手に対し、個の対策云々の前の段階で崩されてしまっては後ろの選手もそう何度もは止められない。

遠藤航不在で再び崩れた中盤のバランス

システム面で弱みに付け込まれたのと同時に、日本の中盤にはさらなる問題が発生していた。

それは遠藤航の負傷により柴崎岳塩谷司の中盤中央のコンビで試合に臨まなければならなかったという点だ。

これまでも初戦のトルクメニスタン戦では冨安健洋柴崎、ウズベキスタンでは塩谷青山敏弘がコンビを組んだ試合では不安定な場面が目立った日本。

本来のポジションでない冨安、追加招集で久々の代表となる塩谷、攻撃の組み立てで貢献するタイプの青山とヨーロッパの舞台で戦っている柴崎、遠藤を比べるとその実力の差があったことは否めない。

特に今大会は遠藤航のアグレッシブな守備が非常に目立ち、相手の攻撃の芽を摘んでそこから日本の攻撃が始まるという形も多く作っていた。

また、それに連動する形での柴崎がセカンドボールを拾って縦にパスを入れていく連動した形を見せていた。

それに比べるとカタール戦の塩谷はボールへの寄せが甘く、縦パスを何度も通されて危険な場面を与えてしまっていた。1失点目も2失点目も塩谷がもっと寄せていれば・・・という状況だったのは確かだ。

そうなると柴崎も、自分が寄せに行かなければならないとばかりに前に出て2人のポジショニングが曖昧になり、その裏を簡単に使われてしまう。

システムのミスマッチと、この中盤の構成を前に日本の全体の意思統一はなくなっていった。

防ぐ術はあったのか

森保監督の語る通りならば、戦術面で相手の出方を見て試合前にチームで決めていた変更を実行することは容易だったはず。

なぜなら、試合前から相手の情報があり3バックも想定できた以上、試合中のポジショニングの変更は試合前に選手に伝え、戦術確認に組み込むことができるからだ。

特に3バック(5バック)のチームは現代サッカーでも多く見られるし、それこそ森保監督もサンフレッチェ広島時代に長く採用してきたシステムでもある。

選手構成や細部は違えど、どこを長所、短所としているかは当然理解しているはず。

仮に「相手のシステム云々ではなくアジア相手ならば日本のスタイルで押し切らなければならない」とするのであれば、これまでの粘り強く戦ってきた僅差での勝利はなんだったのかという話になってしまう。

今大会は結果を出すことですべての不安材料を押さえつけてきた印象が強い。それだけに最後に戦術面でイージーな負け方をしてしまったことは残念でしょうがない。

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